米国では最近、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の関係正常化や、大統領選の郵便投票の混乱、新型コロナウイルスのワクチン開発の進捗(しんちょく)状況、大規模な経済対策、9月からの学校再開の是非など、大きなニュースが盛りだくさんだ。
中国への攻勢も継続され、大統領選まで80日を切るなか、あらゆる事象が選挙に直結しており、米国民の関心はどれもとても高い。
イスラエルとUAEの件は、民主党の副大統領候補であるカマラ・ハリス上院議員の話題をかき消すように報じられた。内政問題に注力するのではないかと思われるジョー・バイデン前副大統領-ハリス氏に対し、ドナルド・トランプ大統領-マイク・ペンス副大統領が「外交の強さ」を見せつけたようなタイミングでもあった。
米国は、日本の25倍の国土と2・5倍の人口を持つ。移民・多民族国家でもあり、日本と単純に比較することはできないが、政治家、特にリーダーの振る舞いには、共通する点があると日々実感する。
それは、政治とは第1に「国民のこと」を考えて行われるべきだが、民主主義を導入している限り、「選挙に有利かどうか」に重きを置いてしまっている点だ。一歩間違えば、理念も信念もない、単なる大衆迎合政治へと向かってしまうことへの懸念が生じる点も、共通といってよい。
米大統領選は、各州の選挙人の総取り戦となる。前回2016年の選挙では、獲得した選挙人では、ヒラリー・クリントン氏が232人、トランプ氏が306人でトランプ氏の勝利となったが、得票率はクリントン氏が48・2%、トランプ氏が46・1%で逆転していた。
米国という世界最強の国で、バックグラウンドの違う人々が求めることのすべてを満たすことは、そう容易ではない実態が分かる。
暴言が多く、分断を煽り、一国主義を貫こうとするトランプ氏は一見、米国民の反感を買っているようにも見える。だが、いまだ4割前後の支持率が持続されているように、トランプ氏の施政に賛同の声があることも事実だ。
特に注目すべきことは、トランプ政権による対中攻勢が続くなか、在米中国人(=選挙権を持っているか否かにかかわらず)の中には「中国はルールに基づいた行動を国際社会ですべきである」という意見が決して少なくないことである。
世界の民主主義国家の選挙で、近年、世論が二分する結果が出ていることを考えても、有権者にとって、選挙が難しくなっていることも事実である。その中で政治が行うべきことは、「国民のための政治」を、「理念と信念」を持って堂々と行っているのかということに尽きるのではないだろうか。
TOP画像)flickr The White House
【激動!米国現地リポート】世論分断のなか、求められる「国民のための政治」 米大統領選まで80日切る (夕刊フジ短期連載「激動!米国現地リポート」2020年8月21日掲載)