“本音”理解しないまま…何をもって女性活躍か 独り歩きした「数値目標」

“本音”理解しないまま…何をもって女性活躍か 独り歩きした「数値目標」

2015年に施行された「女性活躍推進法」に基づき、日本は、女性が結婚や出産を経ても、仕事が継続できること、また責任ある立場(管理職や役員など)に就く女性を飛躍的に増やすという社会へ方針転換した。女性が仕事を継続できない要因の一つは、家庭との両立の難しさであった。この要因を取り除くために、保育園や学童保育の受け入れ拡充、男性の産休・育休取得の推奨など、あらゆる施策が実行されている。

一方で、この間、「女性活躍」と言われることに敏感、というよりも抵抗を感じていたのは、男性よりも女性であった。そもそも、何をもって活躍というのかさえも、よくわからないというのが女性たちの本音であったのだ。女性管理職の数や継続年数の長さなどをもって「活躍した」と思っているのは、大概男性たちであり、女性たちの本音を理解しないまま、数値目標だけが独り歩きしてきた感がある。実際に、家庭と仕事の両立の中で、悲鳴にも近い、日々の苦しさを感じることも、決して珍しいことではない。家族のことに専念をしている、いわゆる専業主婦の女性たちの中にも戸惑いがおこり、仕事をする女性としない女性の壁はどんどん高くなっていった。

私が現在かかわる建設業界の、主要団体である日本建設業連合会(日建連)では、「けんせつ小町活躍推進計画~働きたい、働きつづけたい建設業をめざして~」(けんせつ小町は、日建連が制定した建設業で働く全ての女性の愛称)として、今年4月からの5年間の行動計画を策定した。

私はこの計画策定に、部会長としてかかわったが、今年度までの5年間の計画から「進化」させ、より女性自身が満足できる職場となるような目標を見据えた行動計画を検討してきた。対2018年度で、女性管理職数を1.5倍(2100人)、女性技術者の割合を5.9%から10%程度に、建設現場の女性専用トイレ・更衣室設置を100%(同トイレ45%、更衣室31%)、育休取得男女ともに100%にするなどの数値目標も設定したが、合わせて、それらを実現する上で阻害要因となっていることをきめ細かく調査することも、具体的な実施方策とした。

総じて女性管理職が増えないのは、そもそも適齢期の女性の数が少ないことや、子育てや介護をしながら、責任ある立場になるのは荷が重いなどの理由が挙げられる。女性の管理職への積極的な登用が、皮肉にも女性の離職につながるケースもある。もちろん、管理職や責任ある立場で、男性と同じようにキャリアを積みたいと思う女性もいるが、家庭との両立をしながら、うまく仕事が続けられればよいと思う女性も多い。個々の女性たちが求めている働き方に、きめ細かく対応する柔軟性や発想がないと、「女性活躍」は実現しない。それが女性を過剰に甘やかす結果となってはいけないのだが、そうならないためには、女性自身も自分の仕事に懸命に向き合う姿勢が必要である。

誰にも等しく与えられている1日24時間という時間の中で、仕事をしながら、家のこと、子供のこと、親のことなど、それぞれの境遇によって、時間の配分は自ずと異なってくる。今の時代、それは必ずしも女性だけのことではない。男女問わず、可能な限り一人一人の事情に即した対応とそれをお互いに許容できる職場環境を、コミュニケーションをしっかりとりながら、作っていかなければならないのである。

フジ・ビジネス・アイ「高論卓説」(2020年2月14日掲載)

 

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