宿題山積みの“継承”内閣 「ハネムーン期間」の後はどうなるか

菅義偉政権は、世論調査で高支持率をはじき、期待値は高いようである。日本が著しく遅れているデジタル化や、新型コロナウイルス対策で弊害となった縦割り行政の打破などを目指す行政改革など、国民から比較的分かりやすいイッシューを掲げていることが一因であろう。しかし、いわゆる「ハネムーン期間」として、年末までの約100日間に、これらの課題にどれだけの進捗(しんちょく)があったのか、それを冷静に判断する必要がある。現時点では、「お手並み拝見」といったところだ。

本来、国のトップである総理大臣が、今、発すべきことは、国の大きな方向性をどう定めるのかということである。目の前にある新型コロナの収束と大打撃を受けた経済をどうやって回復させるかはもちろんのこと、米中対立のはざまにいて、領土問題も拉致問題も解決できていない日本が、独立国として、どのような戦略を持つのか、その点における具体策について、菅総理はどのように考えているのか。

また、「安倍晋三内閣の継承」についても、何を継承するのかさえ、分からない。安倍政権の末期は、アベノマスクに象徴されるように、国民の肌感覚を忘れた政策が連発され、閣議決定された補正予算案をやり直すという事態もあった。その原因を自民党議員に聞けば、「国民の意見が届いていない」からであると言っていた。菅総理は、その安倍政権のど真ん中にいた人物である。補佐官などの官邸スタッフも留任されている。国民の思いを受け止められなかった官邸を、ほとんどそのまま残したような布陣で、安倍政権の直すべきところは直すと言うのなら、どこをどう直すのか、そしてよかった点で継承することは何か、具体的に語るべきであろう。

さらに、安倍政権時代の「宿題」は他にも山ほどある。特に、教育については、総裁選でも全く争点にならなかったことは、国家として大問題である。国際的に活躍する人材の減少、海外留学への意欲の低下、さらに、大学入試改革の修正や9月入学の是非、古典的な「金太郎アメ製造」のための教育内容など、「無償化」という子育て支援策ではない、本来の教育政策については、一体、どうしようというのか。

加えて、自民党の総裁選のプロセスについても、安倍前総理の辞任表明から、菅総裁を選出するまでの過程で評価できる点は一つもない。先に述べた通り、自民党議員の多くが、安倍政権の末期、官邸での決定に疑問を抱いていたにも関わらず、国民でもある自民党員の意思を聞くための党員投票を行わないという総裁選の実施を決めた。安倍政権の、党を軽視する姿勢に批判的な自民党議員も多かったにもかかわらず、その政権運営の中枢にいた官房長官を、わずか3、4日の間に、議員の7割が支持をするというのは、理解に苦しむ。政策が発表されていない段階でもあった。陰では批判しながら、結局は勝ち馬に乗り、「よくない」と思っていても大勢に逆らわない、日本社会の悪しき体質の典型である。

国民にとっては、分からないことだらけの新政権。とにもかくにも、臨時国会をすぐに開き、所信表明を行い、これらの課題にどう取り組むのか、国会の場で明らかにしてほしい。国民のために仕事をすることに意欲に燃える菅政権が、ハネムーン期間を経て、よい評価となることを、国民の一人として切に願う。

 

フジ・ビジネス・アイ「高論卓説」(2020年9月24日掲載)

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政治ジャーナリスト細川珠生

 

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