OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均(2017年)は、小学校で2 1・3人、中学校で2 2・9人。
コロナ禍での学校生活で、日本特有の問題に1学級の人数が多いということがありました。教室内での子供たちの密集度が高いという問題です。日本の学校は、基本的には「40人学級」。教室内でソーシャルディスタンスをとることが難しく、緊急事態宣言の解除直後は、分散登校を余儀なくされました。
日本の学級規模の大きさは、教育内容の変化や今の子供たちの実態に照らし合わせると、かなり無理があると指摘され、長い間の課題となっています。諸外国に目を向ければ、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均(2017年)は、小学校で2 1・3人、中学校で2 2・9人。1学級の人数の多さからみても、日本の教育は、集団教育体制であることがわかります。
1学級の人数は、「学校設置基準」により、小学校から高校まで「40人以下」とされています。さらに、小・中学校は、「義務標準法」で、小学1年生のみ35人、それ以外の学年は40人と定められています。
実態としてはどうなっているかと言えば、小1であれば、36人以上、それ以外の学年であれば、41人以上になると、2学級にすることができるのです。一方、「教育上支障がないのであれば」41人以上になっても、1学級のままであってもよいとされています。公立学校の設置者、つまり運営の主体は、小・中学校は市区町村、高校は都道府県等となるため、最終的にはそれぞれの設置者が「児童・生徒の実態に応じ柔軟に編制」するとされています。
そのため、40人満杯で1学級としているところもあれば、20人・21人の学級、30人・26人の学級、あるいは中学以上になると、45人学級などが存在することになるのです。小1だけ、その基準が35人となっているのは、いわゆる「小1プロブレム」に対応するためです。
ある程度、学校ごとの事情に即して柔軟な対応ができるのであれば、できるだけ少人数学級にして、きめ細やかな教育環境である方がいいのでは?と思いますよね。私も、今の世の中で、必要な教育内容を行うためには、少人数にしないと不可能であるとさえ思っています。しかし、それがなかなかできないのは、予算と教育内容の問題があります。学級数が増えれば、当然、先生を増やさなくてはいけないし、その分の費用が掛かります。例えば、基準を「30人以下」とした場合には、現在の教員数の1割増、新たに約8万人の教員が必要という試算もあります。また、少人数指導に適した教育内容やカリキュラムの編成も必要です。オンライン教育が普及しなかった理由の一つに、先生たちにとって指導法を変えることへのハードルが高かったことが挙げられていたように、「変える」というのはなかなか難しい実情があるようです。
少人数学級の実現が遅々として進まないため、教科担任制や習熟度別学習の積極的な導入などで、なるべく個々の子供たちに即した教育が行われる努力は、すでに始まっています。また、少人数学級を一気にではなく、段階的に導入することで、教員増の必要数もある程度抑えられるなど、学校現場や専門家からの提案もあります。今の社会の中で育つ子供たちにとっての最適な教育環境を、なるべく早く整えていってほしいですね。
VERY Navy 2020年12月号 第9回 『細川珠生さんのNEWSなエデュケーション』