【第5回】「学習の遅れ」と「年間の学習時間」どう考えればいい?[教育ニュース]

来年度からの「9月入学」導入は見送られる方向ですが、それならばどうやって3月までに、本来学ぶべき学習の時間を確保するのか、知恵と柔軟な対応が必要です。

子供たちの「ニューノーマル」の学校生活が再開され、2、3カ月に及んだ長い休校期間の遅れをどう取り戻すのかが、〝with コロナ〞の中での、最大の課題でしょう。
ずっと懸念されていたのが、「学習の遅れ」でしたね。家庭学習期間が1学期の半分にも及べば、勉強は大丈夫なのかと思って当然です。「9月入学」(学校の年度を9月から翌年の8月までとすること)の案も、来年3月までの今年度を5月や6月まで延長すれば、授業時数も確保できるということから、この際、来年度の始まりを9月にし、グローバルスタンダードである9月入学へ変えてしまおうという目的も含んでいました。結局、来年度からの「9月入学」導入は見送られましたが、それならばどうやって3月までに、本来学ぶべき学習の時間を確保するのか、知恵と柔軟な対応が必要です。

ところで、そもそも、学ぶべき学習時間ってどれくらいなのか、気になりますね。子供たちの授業時数は、「学習指導要領」の中で、年間の標準時間が示されています。教科ごと、学年ごとの総時数があり、総時数でいうと、小1は850時間、小2は910時間、小3は980時間、小4から中3までは1015時間となっています。教科ごとの時数は、たとえば、国語は、小1は306時間、小6は175時間、中3は105時間です。社会だと、小3は70時間、小6は105時間、中3は140時間です。時数の多さと内容の濃さとは関係ありませんが、低学年で重視すべき教科、高学年でたくさん学ぶことがある教科という違いはよくわかりますね。また行事や小学校のクラブ活動は「特別活動」や「総合学習」の時間の中で行うことになっています。中学校の部活動は、実は、「教育課程外」なので、指導要領には示されていません。

学習指導要領は、教えるべき内容とそれに必要な時数を「標準」として示しているので、教える内容が増えたり減ったりすれば、当然時数も変わってきます。また約10年ごとに、小中高が1年ずつ時期をずらして改定され、合わせて教科書も変わります。小学校はちょうど今年度から、中学は来年度、高校は再来年度から新しくなります。また、教育活動というのは1年間を「35週(小1は34週)以上とする」ことになっています。

しかし、これはあくまでも「標準」として示しているにすぎなく、平時から、各学校、各地域によって、多少の融通を利かすことはできることになっています。例えば、夏休みの短縮なども、以前から行っている自治体がありますね。また、「授業」という考え方が、「対面」にこだわっていることも日本の特徴でもあり、オンライン授業が普及しなかった理由にもなっていました。今回は、「非常時」であることから、文科省も、休校期間中の家庭学習については、学習内容の定着が十分に見られ、再度学校で指導する必要がないと学校が判断したものは、授業時数としてカウントしてもよい、としています。

今年度の期間延長をしないのであれば、「特別活動」や「総合学習」の時間を教科に振り替えたり、長期休暇を短縮するなどして、「標準」の授業時数を柔軟に運用していくしかありません。でも、行事なども学校(集団)生活の中では大事な教育活動であり、子供たちの楽しみでもあります。それらを過度に奪うことのないような知恵を期待したいですね。

 

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