入試シーズン真っただ中である。毎年思うが、なぜインフルエンザが猛威を振るうこの時期に、しかも大雪など気象状況も悪い時に、「人生を決める一発勝負」の機会が与えられることになるのか。場合によっては住む土地も変わるかもしれないというのに、その決定もあまりに直前である。3年後からは、成人年齢が18歳以上となるので、成人式への影響もあるだろう。
AO入試や推薦などで、選抜方法は多様化し、特にAO入試の場合は、前年の9月頃には合否が出ることが多い。一般入試との時期の違いから、入学後の学力にも差が出るという問題はあるが、時期だけを言えば、早くに決まるのは決して悪くないことである。
ただ、その場合、大学側から、入学までの期間をどのように使うかを明確に示す必要がある。課題図書や体験に関するリポート提出などを必須とするなど、大学進学の準備につながるような課題を与えるべきで、ただ、遊んでいるだけでは無意味な時間となる。
縁あって、米国の高校への出願手続きにかかわることになった。一発勝負のテストなどはなく、学力をはかる共通のテストスコアは必要だが、より重要なのは、書類審査と面接である。書類は学校によって多少違うがかなり膨大だ。担任・英語・数学の各先生からの推薦状、本人のエッセー(自由作文)、親向けのQ&A式のエッセーなどで、全て文章での回答となる。教師からの推薦状は、5段階の評価の他に、記述式の設問がある。「生徒を3つの言葉で表すとすると何か」「他の生徒たちと比べて優れているところはどこか」「学校(集団)に対して、どのような役割(貢献)をしているか」などである。
子供(受験生本人)については、かなり広範囲の質問が課せられるが、好きな科目とその理由というオーソドックスな質問から、「勉強は意味があるものと感じた経験は何か。またそれはなぜか」「学校という集団に対して、何か貢献できたことはあるか」など、それまでの自分自身の経験を振り返りながら、どう思うか、どう考えるかということが求められるのである。
平均するとどの学校も10問程度ありA4用紙にして4、5枚程度。かなりの量である。親に対しても「子供に対する長期、短期の教育方針」「勉強をする上での性格の長所と短所」など、子供の教育についてどれだけ真剣に考えているかが問われる。
日本でも、大学・高校とも記述式の問題を増やす傾向にあるが、とても米国の比ではない。そもそも、何を求めて記述するのかが全く違うのである。某都立難関校の推薦入試で「小論文」を課しているが、1~2問で、合計で600字程度である。グラフを読み解く力を見る問題もあり、それはそれで無駄だとは思わないが、どんな要素を求めるのかが、米国の教育とは全く違うのである。
米国をはじめ海外の教育が全てよいということでは決してないが、少なくとも私自身が知る限り、海外の子供たちは、日頃の授業はもちろん、進学のたびに、自分自身のこれまでの経験やこれから何を学びたいかなどを真剣に考え、それを文章によって伝える教育を受けている。それだけ思考力も鍛えられる。単に語学力の違いだけでなく、まるで違う人間を育てているというのが私自身の実感だ。
昨今の外交交渉の不振ぶりを見ていると、日本の教育が招いた結果だと思わざるを得ない。入試に準じた教育にならざるを得ないのなら、高校・大学の選抜の在り方を、もう少し世界標準に近づけるべきである。