「読解力」はすべての勉強、あるいは将来の社会活動においても、基本中の基本となるものです。
日本の子供たちの学力が、世界でどれくらいの位置にあるのか、気になることがあると思います。厳しい〝受験戦争〟があるのだし、きっと世界屈指の高さであろうと期待しちゃいますね。確かに世界の中では高いほうです。先進国ですから、当たり前といえば当たり前。でも、このところあまりいい結果が出ない分野があります。それが「読解力」。日本は、OECD(経済協力開発機構)が年ごとに実施する「生徒の学習到達度調査(PISA)」に参加していますが、直近の’18年調査では厳しい結果が出ました。
CD加盟37カ国における比較では、「数学的リテラシー」では1位、「科学的リテラシー」も2位という堂々たる結果に対し、「読解力」は11位。それも前回(35カ国中)の6位から一気に5つも順位を落としました。またOECD加盟国以外も含めた全79の参加国・地域の中では、「数学的リテラシー」は6位、「科学的リテラシー」は5位、そして「読解力」は15位とさらに順位を下げ、1位は3分野とも「北京・上海・江蘇・浙江」。日本より上位には、主にアジアの国々が並びます。特に日本で深刻なのは、「テキストから情報を探し出す問題」や「テキストの質と信ぴょう性を評価する問題」の正答率 が低く、また「数学的リテラシー」や「科学的リテラシー」でも「自由記述」となると、正答率が低いということ。つまり、文章を理解 すること、また自分が言いたいことを文章に表すという能力が相当低下しているということなのです。
「読解力」はすべての勉強、あるいは将来の社会活動においても、 基本中の基本となるものです。読解力がなければ、どの分野であっ ても、問題の意味も理解できないし、社会に出てからも、一つ一つ の仕事の意味、あるいは、人が言わんとしていることを理解できないということにもつながる、最も重要な能力といってもよいでしょう。文部科学省は、今回の結果について、調査方法がパソコンを使ったもので、その操作に慣れていなかったということを、一つの要因として挙げています。でも、パソコンでの調査は前回(’15年)から始まったもので、それを理由にしていては根本的な解決にはなりません。
実は、’03年と’06年の調査でも、読解力は12位(いずれも30カ国中)という〝惨敗〞でした。そこで、国語の授業時数を義務教育9年間で、119時間増やし、その中で力を入れたのが読書です。その甲斐あって、日本は読書好きの子が多く、また読書好きのほうが読解力の正答率も高いという結果も出ています。それでも順位が下がるのは「読む」だけでは「読解力」は上がらないということです。総じて、今の学校現場では、先生たちの忙しさから「作文」の指導が著しく減らされています。かつて、私の時代には当たり前のように取り組んだ「読書感想文」も、その言葉すら知らない子供もいるほどです。
ICT(情報通信技術)の活用ももっと進めながら、同時に本を読んで感想文を書いたり、何か気になることを作文にしたりという機会も増やさなくてはいけません。長い休校期間に感じたこと、読んだ本の感想などを文章にしてみる、それだけでも子供の読解力アップ、ひいては学力アップにも決して無駄ではないと私は思っています。