概算要求って何? 9月からの“命懸け”の交渉が子育てに影響する【第9回 細川珠生の「ママは政治1年生」】

7月は参院選、都知事選と続き、政治は大忙しでしたが、その後、安倍総理も夏休みを取ったりと、少しゆっくり過ごしていたかのような8月。でも、政治は相変わらず忙しく、動いていました。その一つが、国の予算を作る作業です。

教育から年金まで、子どもとあなたの人生に関係

国家予算なんて、関心のない人も多いでしょう。でも、ママたちでも大いに関係のある子育てや教育、そして老後の年金や介護、医療など、生活に直結することから国の防衛など、ちょっと遠いテーマまで、国の予算がなければ成り立たたず、実はとってもとっても重要。今回は、国家予算がどのように決まるかという仕組みを紹介しますね。

ここ数日、各省庁による「〇〇億円の概算要求」とか、「〇兆円の概算要求」という新聞記事が、連日一面に掲載されていました。その理由は、各省庁が来年度に向けて「こんな事業をするから、これだけの予算が欲しい」と財務省に概算を要求するのですが、その期限が8月末だったからなのです。

各省庁が事業を考え、予算案を組む基本となる方針は何かというと、毎年6月ごろまでに閣議で決められる「骨太の方針」というもので、今年は6月2日に「骨太2016」として閣議決定されました。

前日の6月1日に、安倍総理が記者会見を行い、消費税再増税を見送ることを表明しましたが、来年度も消費税は8%であることを前提に、再増税を延期した理由でもある経済の回復を優先するという方針も、この「骨太2016」にも盛り込んでいるのです。

各省庁は何を要求しているのか

例えば、厚生労働省は過去最高となる31兆1217億円で、その中には「働き方改革」として877億円、待機児童対策として1169億円、保育所などの受け皿整備に712億円、年度途中からでも保育園入園が可能となる「入園予約制」の導入を自治体に促すなどの事業案が盛り込まれています。

文部科学省でも、大学進学者への無利子奨学金支給者を2万4千人増員するための必要経費や教員を3000人増員分の経費などを計上しています。

各省庁は8月末を期限に概算要求を行い、その後、財務省の査定が行われます。その中で、事業そのものが削られたり、額が減らされたりします。ここに挙げた事業がそのまま実現できるわけではありません。

そこで、提出された概算要求の査定が行われている年末までの間、関係者、関係団体、あるいは自治体などが、国会議員に何とか減らされないよう「陳情」します。最終的には、例年12月20日に、財務省がそれらを「財務省原案」として取りまとめ、12月25日に閣議決定。翌年の通常国会に「予算案」として提出されて、衆参両院で審議、採決を行って、年度が替わる直前の3月末に予算が確定する、という流れになっています。

9月から12月までが来年度の予算獲得のためには重要

財務省原案が出てから閣議決定されるまでの間にも、復活折衝など、関係者にとっては“命懸け”の交渉が行われますが、国会に提出されてからは、無修正で成立することが「慣例」となっているため、実は概算要求が出てから年末までが、各省庁にとっては、どれだけ予算が獲得できるか重要な期間となってきます。つまり、9月から12月までですね。

平成27年度予算では、保育園・幼稚園の無償化が概算要求で計上されたにもかかわらず、財務省の査定で削られて、復活折衝を経て、何とか、5歳児だけ、それも所得制限を設けて無償化するという最低限の予算しか獲得できなかった、ということもありました。

国家予算の仕組みなんて、どうなっているのか分からなくて、ついつい無関心でいてしまいますが、私たちの生活には大きく影響することなので、ちょっと頑張って関心をもつと、また違った角度からの政治が見えてくるかもしれません。

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政治ジャーナリスト細川珠生

 

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